「はい」
「記念にみんなで写真撮りませんか?」
そう言って、カメラをちらちらと振って見せた。
「いいですよ」
阿久津が快諾すると、ゼミ生のテンションが高くなった。
「このぎっしりつまっている本棚をバックにしよ。賢そうに見えるから」
そう言う美穂にみんなは「うんうん」とうなずきながら笑った。
「先生は真ん中ね」
阿久津は、仕切る美穂の言うとおりに、おずおずと真ん中へ移動した。
奈緒の隣りに阿久津が座る。
「あ~、もう少しみんな寄って」
美穂が液晶画面を眺めながら指示する。
奈緒が渋々阿久津の方へ寄ると、肩が触れた。
胸がずきずきした。
「じゃ、撮るよ~」
美穂の合図で、カメラを見つめる。
セルフタイマーをセットした美穂は、急いで奈緒の斜め後ろへ移動した。
カシャ――。
シャッターが切れて、ほっとする。
阿久津先生の隣りでどんな顔して写ったんだろう。
小さなため息が漏れた。