「お前、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃないのか?」

阿久津は黙って、いちごを口に放り込んだ。

「お前、まだ35だろ?」

その言葉に、阿久津の眉がぴくりと動いた。

まだ、35。

まだ。

「父さんと同じこと言うんだな」

阿久津はパフェに目を落としたままぽつりと呟いた。

「親父もそんなこと、言ったのか?」

「ああ」

圭介は大きく息を吐きながら背もたれに体を預けた。

「親父も心配してるんだよ。お前のこと」

「矛盾してるだろ」

阿久津は圭介の言葉を遮った。

結局、正太郎と由美のことは一切話さなかった。

由美があんなことになったのは、父さんにだって責任があるのだ。

俺から大切な由美を奪っておいて、俺の心配をしてるなんて、勝手じゃないか。

俺だって、簡単には父さんを許せないんだよ。