それでも忘れていた温かい感情が、体の中でうごめいている。

だから、苦しい。

ぼんやりとパソコンのディスプレイを眺めているところに、携帯が鳴った。

それは、珍しく兄の圭介からだった。

なんだ?

「はい」

「あ、涼介?俺だ」

「うん」

「元気か?」

「まあ」

「お前、この正月は帰ってこいよ。しばらく戻ってないだろう?」

圭介のその言葉に、阿久津はなにも答えなかった。

「親父にわだかまりがあるのはわかってる。けどな、今回は帰ってこい」

少し切羽詰まった圭介の声に、阿久津は嫌な予感がした。

「何か、あったのか?」

すると、受話器越しに圭介のため息が聞こえた。

そして。

「親父、もう、そんなに長くないんだ」