奈緒が哀しみに暮れている頃、阿久津もまた苦悩していた。

俺が自分の気持ちに中途半端に素直になったせいで、よけいに彼女を苦しめてしまった。

なんて馬鹿なことをしたのか。

俺の人生に彼女を付き合わせるのは、あまりに重荷なことはわかっていたじゃないか。

それなのに変に期待をさせて、挙句、裏切って。

それならば、俺はずっと死んだままでいればよかったのだ。

彼女には、明るい未来がある。

それを、奪ってはいけない。

……俺に、幻滅すればいい。

こんな最低な男のことなど、忘れてしまえばいい。

阿久津は、美咲の言葉で自分の犯した罪を再認識させられていた。

十字架を背負い続けなければならないのだ。

人を幸せにする資格も、自分が幸せになる資格も、端からないのだ。

……それなのに。