奈緒は、無理やり体を起こし、重い体を引きずって玄関まで行った。
そして、玄関の戸にもたれかかり。
「……ここにいるよ」
と、消えそうな声で呟いた。
「ああ、奈緒。いるんだな？ああ、よかった」
その声は、心底ほっとしたような声だった。
「なあ、奈緒。開けてくれよ。顔、見せてくれよ」
孝太郎は穏やかに語りかけたが、奈緒は何も答えなかった。
しばらく沈黙が続いた。
すると、孝太郎が玄関から去っていく足音が聞こえた。
……あ。
待って 。
行かないで。
一人ぼっちは、いや。
放っておいてほしいのに、去られてしまうとさらに孤独を強く感じてしまう。
奈緒が玄関先でうなだれていると、また足音が戻ってきて、玄関の前で止まった。
「奈緒」
「……ん」
「お前の好きなチョコレート持ってきた。これだけでも受け取って」
孝太郎……。
あんまり優しくしないで……。
孝太郎を頼ってしまう……。
