「メリークリスマス」
玄関の戸を開けるやいなや、美咲は満面の笑みでそう言った。
「やっぱり家にいた」
「どうした?」
淡々と尋ねる阿久津が、余所行きの格好をしているのを見て、美咲は、
「今からどこか行くの?」
と尋ねた。
阿久津が目をそらせたまま、「少し」と答えると。
「デートだったりして」
冗談っぽく言った美咲の言葉に、一瞬眉がぴくりと動いた。
それを見逃さなかった美咲は。
「まさか、図星?」
「用はなんだ?」
美咲の言葉を遮るように、要件を尋ねる。
「去年みたいに、涼介さんとシャンパンを飲もうと思っただけよ。ほら」
そう言って美咲は、手に持っていたシャンパンの入った紙袋を持ち上げて見せた。
「すまないが、約束があるんだ」
阿久津がきっぱりとした口調でそう言うと。
「誰?どんな人?」
美咲の声が少し鋭くなった。
それには答えず、身支度を続ける。