『……合格のご褒美に、クリスマス、一緒にいてくれませんか』
彼女がそう言って、自分を見上げた時の濡れたまつ毛と切ない顔が浮かぶ。
あの時、たしかに嬉しかった。
しかし……。
もう一度、由美と隼人を見つめる。
……君たちを、過去にしてしまうことになる。
その時だった。
インターホンが鳴った。
モニターで客を確認すると、そこには美咲が立っていた。
「どうした?」
「ちょっとだけいい?」
「ああ」
阿久津は美咲を招き入れた。
せっかくの初デートなのに、雨だなんて。
奈緒は、姿見の前に立ち、ああでもない、こうでもないと服をコーディネートしていた。
今日は、19時に阿久津の指定したフランス料理店で待ち合わせすることになっている。
先生、どんな服を着てくるのかな。
頭の中で、阿久津にいろんな服を着せてみる。
どんな服だって、格好いいよね、阿久津先生は。
奈緒は一人、顔を赤らめた。