阿久津は、マンションの窓から空を見上げていた。

空はどんよりと鉛色の厚い雲に覆われている。

12月24日は、朝から雨だった。

君たちの涙じゃ、ないよね?

阿久津は仏壇の由美と隼人の写真を一瞥した。

由美。

隼人。

君たちの顔をまっすぐ見られない。

罪悪感にさいなまれて、胸が痛む。

阿久津はこめかみを抑えた。

自分の気持ちに素直になってしまったことに、戸惑っていた。

ましてや、相手は自分のゼミ生だ。

『先生がどんな人でも……やっぱり、どうしても……好きなんです』

奈緒の純粋でまっすぐなこの言葉が、胸に染みわたった。

不器用だが曇りのない素直な瞳に、身体が熱くなった。

こんなどうしようもない俺のことを、それでも、愛してくれるというのか。