「それって、奈緒が特別ってことじゃない!」

「……そうなのかな」

「そうだよ!」

「そうなのかなぁ……」

奈緒は加菜の言葉を素直に受け取ることができなかった。

どうしても、阿久津の妻と息子、そして美咲の存在が頭をもたげてしまう。

どう考えても、右から左へというふうに、簡単にはいかないだろうことは、奈緒もわかっていた。

「誘ってみれば?」

唐突に加菜が言った。

「はい?」

「クリスマス。先生、誘ってみれば?」

加菜が冗談で言っていないことはわかった。

しかし。

「ムリムリムリムリ!」

クリスマスは……さすがに。

クリスマスは、特別だから。

奈緒が笑いながら軽く言うと、

「そんなのわかんないよ。振られたわけじゃないんだしさ。奈緒が押して押して押し倒しちゃえば、うまくいくかもしれないよ」

「押し倒すって……」

「押し倒すってのは、言い過ぎだけど。でも、やらずに後悔するよりはいいと思う」

奈緒は「う~ん……」と唸りながら頬杖をついて、窓の外を歩いて行くカップルを目で追いかけた。