翌日。

奈緒はわかば専門学校で、年季の入った短い鉛筆をカリカリと鳴らしながらひたすら試験問題を解いていた。



数日前。

ゼミが終了したあと、奈緒は専門学校を受験することを阿久津に報告した。

阿久津は「そうですか。がんばってください」とだけ言うと、

「あ、そうだ」

と何かを思い出し、自分の筆箱から鉛筆を一本取り出した。

「これをお貸しします」

奈緒に手渡したそれは、ずいぶん短くなった年季の入った鉛筆だった。

「これは?」

奈緒が首を傾げると、

「これは私が中学生の時の恩師にもらったものです」

と言ってその鉛筆を見つめる。

「これを持って行った試験に、私は落ちたことがありません」

そう言うと、少し照れくさそうにして口角を上げた。

「そんな大事なもの、だめですよ」

奈緒が鉛筆を返そうとすると、

「合格してほしいですから」

と、奈緒の手を制止した。

「だけど……」

奈緒はまだ遠慮していてもじもじとしている。

すると。