「……あのね。やっぱりね。断ろうと思う」
奈緒のその言葉に、母は大きなため息をつき、少し鼻で笑った。
「そうかと思った」
その答えに拍子抜けして、奈緒は顔を上げた。
「え?なんで?」
「だって。OKならもっと早く返事が来るだろうな、って思ってたし……」
「思ってたし?」
「あの時のあの電話で、だいたいわかってたわよ。奈緒があそこまで自己主張するなんて、よほどのことだもの」
そう言われて、奈緒は少し自嘲気味に笑った。
結局、見透かされてたってことだ。
「まあ、私立の4年生大学に行って下宿するよりは、安上がりでしょう。ここから通えるわけだしね」
母はにやりとした。
「頑張んなさいよ。自分で決めたんだからね」
そう言われて、奈緒は大きくうなずいた。
「で、試験いつなの?」
「明日」
奈緒がさらりと答えると、
「え!?明日?」
母の声が裏返った。
「あんた、受験料とかどうしたのよ?」
「バイト代で払った」
そう言うと、母は「はぁ~……」と感心したような呆れたような声を出した。