「駄目なんかじゃない」

そう言って、阿久津の手にそっと自分の手を重ねた。

阿久津はそれを避けることなく、ただ首を横に振る。

「いや。由美があんなことになったのは俺のせいだし」

「違うわ。涼介さんのせいじゃない」

美咲は強く否定する。

「いや、俺のせいだよ。あの時、俺が電話に出ていたらあんなことにはならなかった」

阿久津はただ、頭を垂れる。

美咲が重ねている阿久津の手が、拳を握り締めた。

「違う。そんなに責めないで。誰も涼介さんのこと、責めてないんだよ」

力強く握られたその拳を、美咲はぎゅっと握り締めた。

阿久津はうつむいたままゆっくり首を横に振る。

「駄目なんだよ、本当に……」

俺が由美を殺した。

人がなんと言おうと。

それなのに。