「実はね、あんたの就職の話なんだけど……」

「就職?」

「うん。お父さんの知り合いの人がね、建設会社をしてるんだけど、そこで事務で雇ってもいいって言ってくれてるのよ」

母の声はとても明るかった。

「就職が大変な時期にありがたい話だと思うんだけど、どう?」

もちろんOKするわよね、といった口ぶりだ。

「うん……」

うなるように、ただ返答する。

ちゃんと言わなければいけない。

今、言わなければ。

奈緒は固唾を飲んだ。

「あのね、お母さん」

「なに?」

大きく深呼吸をする。

「私、介護の専門学校に行きたいんだ……」

「……え?」

予想もしなかった答えに、母は戸惑っているようだった。

「ほら、わかば福祉専門学校ってあるでしょ、そっちに。あそこだったら実家から通えるし」

下宿代はかからないことを強調する。

すると、今度は母がうなるような声を出し、さっきとはうってかわって真剣な口ぶりで切り出した。