受け取ったそれは、ホットミルクだった。

「ありがとうございます」

阿久津はソファに深く腰掛けると、ホットミルクを一口、ゆっくりのどに流し込み、大きく深呼吸した。

奈緒はマグカップを持ったまま、どうしていいかわからずその場に立っていたが、勇気を出して阿久津の座っているソファに腰を下ろした。

阿久津から一番距離のあるソファの隅に座っていても、数十センチのところに阿久津の身体があって、それだけで身体が火照る。

阿久津をちらりと見た。

洗いざらしの髪、憂いのある目、シャープな顎のライン、さっき私の手を握った大きな手、組まれた長い脚。

あまりに格好良くて、そして切なくて、奈緒は少し座り直した。

ほんの少しだけ阿久津に背を向けて。

ホットミルクを一口飲むと、温かさが身体中に染み渡った。