研究室の前に着くと、奈緒は大きく深呼吸をした。

意を決して扉をノックする。

しかし、返事がなかった。

もう一度、ノックをしてみたが、やはり静寂なままで。

「阿久津先生?」

ドアノブを握って開けようとしたが、鍵がかかっていて開けられなかった。

「うそぉ……」

携帯が手元にないと、不安で仕方がないというのに。

奈緒はすっかり肩を落として研究室を後にした。