その日の夜、奈緒は自分の部屋でパソコンの画面を眺めながら、母に公務員試験が全滅だったことをメールで報告した。

電話で母の声を聞くと泣いてしまいそうだったからそうしたのに、送信してまもなく電話が鳴った。

『もしもし、奈緒?』

「うん。まあ、そういうことだから」

努めて平静を装って答えた。

『ダメだったものは、まあ、もうしょうがないよね』

母は深刻さを微塵も出さず、あっけらかんとそう言った。

それが救いだった。

妙に湿っぽくされても、それはそれでつらい。

「うん」

『うん、わかった。あんまり気を落とさずにね』

「うん」

『じゃあね』

「うん」

そう言うと、母はあっさり受話器を置いた。