阿久津はため息をつきながら、助手席のシートベルトを取ろうとした時、自分の顔が奈緒の顔に近づいてしまい少し緊張した。
エンジンをかけ、車を走らせる。
繁華街のネオンはまだまだこうこうと明るかった。
信号待ちをしている時、ちらりと助手席を見た。
完全に眠っている。
すると、外の明かりに照らされて奈緒の頬がきらりと光った。
一筋、涙が伝っていた。
それを見た途端、阿久津は胸が絞めつけられた。
つい、涙の意味を考えてしまう。
試験に落ちたからだろうか、それとも……そこまで考えた時、信号が青に変わった。
奈緒のアパートの前に着くと、車を止め「着きましたよ」と声をかけた。
しかし反応がない。
「相沢さん」と肩を揺すってみると、ようやくなんとか目を開けた。
「着きました」
「ねむい」
「眠くても、起きてください」
もう一度肩を揺する。