「奈緒ちゃん、そろそろ帰らないと。もうずいぶん遅くなってきたから」

完全に潰れている奈緒をゆする。

「やだ。あぁ阿久津せんせぇ」

「ちょっと飲ませすぎたな」

君島は長い髪をかきあげて、頭をかいた。

「相当いろいろたまってたんじゃないの?」

シュンは水の入ったグラスをコースターの上に置いた。

「私、ダメダメだもん。ダメ子ちゃんだもん。就職もだめだしさぁ、恋もだめだしさぁ」

「そんなことないよ」

背中をさすりながら、優しくなだめる。

「阿久津先生のこと、ほんとうに好きなのぉ」

「大好きなんだよね」

「うん。大好きなのぉ。ほんとうはすごくすごく好きなのぉ。諦めたりなんかできないのぉ」

その様子を見ていたシュンは、腕を組みながら眉を下げた。

「よほど好きなんだね、その先生のこと。もう100回以上名前叫んでるよ」

君島はちらりと腕時計を見た。

午前1時。

「よし、わかった。そんなに好きなら……」