俺はもう一度辺りを見回すと

名前も知らない妖精の
服を軽く咥えて持ち上げた


「ちょっと我慢してろ」

俺は急いで水辺へと走った

城から離れた水辺なら
奴等に見つかることはないだろう


「あの…」

「なんだ」

「あなたは黒四獣の黒狼
あなた様は優しい方、
私には分かります。
なぜこんなところに
いるのですか?」

「…分からない」

「じゃあ、」


「もしや黒狼様では?」

妖精との会話を遮るように
声を掛けてきたのはカラスだ

「やや。何をお持ちで?」

「いいところにいた。
カラス、こいつを
スールまで運んでくれ」


「妖精…なぜこんなところに」

「どうせ暇だろ?
分かったらさっさと行け」


「しかし…」

「逆らうな。
いいか?ナラガには言うな」

「…はい
仰せのままに。」


カラスは妖精をのせると
バサっと離陸した