ゆっくりと、噛み締めるように紡がれる言葉に、輝宗は"あぁ"と短い相槌を打つ。




「四方を覆われれば、戦の出来る時間も限られてしまう。全てを統べるのは並大抵のことでは出来ますまい」




遠く、見渡す限りの美しい自然。豊富な作物。


それはこの国の誇りであり、長い冬を越えなければ戦地へ赴くことすら難しいことの象徴でもあった。




「あの子は…梵天丸は貴方様の後を継ぎ、この奥州の覇者となる男子。自ら春を掴む強さを手に入れねばなりませぬ。母がもとで甘やかすわけにはいかぬのです」




そこまで言って振り返った義姫に輝宗は息を飲む。



世界が、止まったような気がした。