そして、上野江梨子は意識が戻らないまま、下野だけが退院して、今に至る。




「俺は、江梨子の意識が戻って欲しいんだ。江梨子の反応が無い毎日なんて、もう嫌だよ」



下野は、叫びにも近い悲痛な声で、俺に訴える。


しかし下野は、無愛想に定評がある俺に、そんな事た訴えるのは、相手を間違えていると思う。

相手を間違えているとは思うが、これは依頼だ。
場合と条件によっては、叶えられない事もないと思う。



「Bloody、オマエは願いを何でも叶えられるんだろ? だったらお願いだ。江梨子の意識を戻して欲しい。江梨子を助けてやって欲しいんだ」


「分かった。ただ、実際に下野の彼女の状態を見ないと分からないが……」

「何?」



彼女は恐らく出血多量。
それなら恐らく……。



「下野は恐らく、下野の彼女の意識と引き換えに、出血多量で死ぬ事になるぞ。…それでも下野は、彼女を助けたいか?」




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