「江梨子、声かけてんじゃん…」



反応しろよ、とまで言うのは、理由が分かってるだけに言う事が出来なくて。
出そうと思ってた声が、掠れた。



結局、俺の所為なんだよね。
江梨子が目覚めないの。


あの時、交通事故に遭わなければ。
あの時、俺が江梨子の代わりに大怪我を負えば。

あの時、俺が江梨子の話をもっと聞いてやれば。




江梨子は今頃、普通に目を覚まして、普通に反応してくれて、普通に笑って、普通に学校に行ってるかもしんないのに。

”~したら”とか、”~出来れば”とかの、後悔が止まらない。






「それから俺さ、今日の体育の授業、病み上がりもあるし、さすがに見学しちゃったよ。俺、体育の授業見学するの、始めてなんだけど」


それでも俺は、医学のプロじゃないから。
江梨子に何も、してやれないから。

せめて江梨子が目覚める事を願って、声をかけ続ける。





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