「その……、すみません」

「何が?」


俺が謝っても、意味が分かんないらしい江梨子のお母さん。


「俺が一緒にいたにも関わらず、江梨子がこんな事になっちゃったなんて」

「仕方無いわよ、俊秀君の所為じゃないわ」



娘が未だに目覚めず、娘と一緒に怪我した男が歩き回っているというのに。

江梨子のお母さんは、俺を責めないっていうのか?


「あの交差点は、元から事故が多いのよ。地形も原因だし、車の通りも多いし」


坂の一番低い所にある交差点。

ただでさえ車は急には止まれないのに、下り坂の所為でブレーキは効きにくい。


「それに、俊秀君がわざと江梨子を怪我させたんじゃないって、おばさんは分かってるわ。俊秀君はそんな子じゃないから」


本当だったら逆恨みとかされても、仕方無いのに。

江梨子のお母さんの言葉に、俺は救われた。





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