和明の言う事はもっともで、俺は医療のプロじゃない。

絶対安静を言い渡されてるし、点滴は打たれてるし、俺は動きたくても動けない。


江梨子が大変な時に、俺が側にいて支えてやれないなんて……。



和明は俺を励ますように、言葉を選んだ。



「……大丈夫だよ、上野は助かるって。何かあったら、絶対に俊秀に知らせるから」

「ありがとう、和明」



ここで和明を責めても仕方無いし、むしろ和明は何も悪くない。

俺に付き添ってくれてるだけでも有り難いと思わないと。

本当は和明だって驚いただろうし、明日も試験なんだから勉強だってしたい筈。




母さんが戻ってきて分かった事があった。

江梨子は峠を越えたが、未だに意識不明で、いつ目覚めるか分からない、という事だった。

俺だけが助かって、江梨子は今も生死をさまよっているんだ。





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