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「もしもし、彰? 落ち着いて聞けよ」




中学時代のサッカー部の仲間から、急に電話がかかってきたから驚いた。




「俺達、市立総合病院にいるんだけど。駿河の彼氏が交通事故に遭ったんだって」




……そういや聞いていた。

真亜咲が、俺達と入れ替わりに入学したサッカー部の後輩と付き合ってるって。
俺自身は、その後輩と会った事は無いんだけど。






総合病院に来た俺が見たのは、手術室の前のベンチに座る仲間二人と、静かに涙を流し続ける真亜咲だった。

真亜咲が苦しんでる。
彼氏が亡くなったら、もっと悲しむのだろう。


真亜咲が好きな俺にとっては、真亜咲の彼氏がいなくなるのは、どう考えたって得な筈なのに。

だって俺に、真亜咲の隣りにいるチャンスが回ってくるから。


それでも、真亜咲が悲しんでいるのを見たら。
そんな損得とか言ってられなくなってきた。

俺の目から、思わず涙が零れる。


俺は、会った事もない人なんだけど。
俺にとっては、いない方が良い存在なんだろうけど。

やっぱ、真亜咲が苦しむのは嫌だ。

それくらいなら、クズな俺が身を引いた方が良い。
ヒリヒリと心が痛んだ。




「真亜咲……」




心配と苦しみにくれる真亜咲は、俺の声には気付かない。
俺の心が、ガラスのように割れた気がした。

俺の目から、涙が零れ続けていた。



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