「流血……、涙が赤くない」


意識が薄れていく中で、驚いてるBloodyの声がする。
胸を刺されたズキズキとした痛みはそのままに、銀によるヒリヒリした痛みが全身に広がっていくのが分かる。
ウチは何とか動く右腕で顔を拭って、うっすらと目を開けて、右腕を見た。
……確かにウチの涙は、何処に付いてるか分かんないくらい、透明になってた。


「……アカメ、今度こそ幸せになってね」


微かに聞こえたDesireの言葉で、ウチは兎の頃に“アカメ”と呼ばれていたのを思い出した。
「うん」と頷こうとしたら、もう首を振る事が出来なくなっていた。


「…………ありがとう」


小さかったけど、何とか声は出せた。
笑おうとしてみたら、普段よりも顔の筋肉が上手く動くのが、何となく分かった。


「流血、ちゃんと笑えてるよ」


拓斗、そうか…。
ウチまた、ちゃんと笑えるようになったか……。
目を閉じて浮かんだのは、灰色の毛の子と薄茶の毛の子と一緒に、笑い合ってる風景だった。



<fin.>





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