俺は流血を椅子に座らせ、俺自身が台所に向かう。
怪力な吸血鬼よりも、さらに怪力な流血だけど、抵抗せずに大人しく座ってくれた。


「今日の夕飯当番、ウチだよ」

「流血は具合悪そうだし、今日はもう良いよ。俺が代わりに作っとく」

「でも……」


流血は俺を見上げて、口を開いたり閉じたりしている。
表情が極端に乏しい流血だけど、口の動きから何か言いたい事は分かった。


「流血は無理すんなよ。また具合が良い時にでも、俺と当番代わってよ」


俺が流血に微笑みかけると、流血は小さく「ありがとう」と呟いた。

流血を苦しめる事になるかもしれないけど、夕飯は豚肉とニンジンのトマト煮にしよう。
ニンジンは洗ったとはいえトマトがかかってるし、冷蔵庫に他の材料も無さそうだ。



流血が俺と夕飯当番を代わる日が、来ても来なくても、俺は仕方無いと思う。
本当なら流血は、とうの昔に逃げていても、おかしくはないんだから。





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