俺は流血の手から包丁を取り上げて、それもよく洗う。
……なかなか危ない物を持ってたのに、俺も流血も怪我しなくて、本当に良かった。


「……ウチ、どうしたの?」

「それは俺が聞きたいよ。流血はニンジン刻んでたのに、急に動きが止まっちゃって、瞬きもせずに泣いてるし」


瞬きもしない目が、血のように赤い涙を流している。
あれを見た時は、本当に怯んだ。
吸血鬼が怪談に怯んでるなんて、ただのギャグにしかならないけど。


「…ニンジン刻んでたら、思い出したの」

「何を?」

「ニンジンやキャベツを、主食として食べてた頃を。いつもの友達と、「美味しいね」って言いながら食べてた頃を」


…それは、アレか。つまりは、兎の頃を思い出したのか。
いつもの友達って、灰色の毛の男の子と、薄茶の毛の女の子のコトか。

ニンジン見てたら、思い出したんだな。



「そうか。……流血、今日はもう良いよ」





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