「…そうか。色々教えてくれて、ありがとね」

「別に」


俺の宿題から湧いた疑問を、俺が答えただけなんだから。
英語の勉強したいから、早く終わらせたくはあるが。


流血は俺を見て、目を少し動かして、口元を少し動かした。
けど、上手く動いてない。顔面中の筋肉が引きつってる。
……笑いたいのか?
笑顔で俺に、礼を言おうとしてくれてるのか?

でも、出来てない。笑えてない。
兎が表情が極端に乏しいように、流血は笑えてなかった。
俺は流血に向かって、大きく頷いてみせた。
流血は俺が頷いた理由が分かったのか、筋肉の引きつりが無くなった。


「……英語、分かんなかったら、教えてあげるから」

「分かった」


俺の手元を覗き込んだのか、流血はそんな事を言ってきた。
俺は受験するつもりも無いし、本当は英語の成績なんて、どうでも良いんだが…。

俺が単語カードで勉強を再開すると、流血は静かに部屋を出て行った。





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