車道用の信号が黄色に変わる。
もうすぐ、歩行者用が青信号に変わる……。
筈だった。




制服が無いような北高の女子用の制服を律儀に着た、灰緑色の髪が目立つ影が、何を血迷ったのか車道に踊り出た。
そこに、猛スピードで飛ばしてきたトラックが近付いてくる。


車は急には止まれない。
この事をこんなにも痛感したのは、最初で最後であって欲しい。


「危ないっ!」


あたしは精一杯に腕を伸ばして、制服から伸びる傷が多めの白い腕を掴み、歩道に引き寄せる。
そのまま、彼女の肩を抱きかかえると、首に赤い液体みたいな物が付いているのが見えた。


腕を伸ばした勢いでストアの袋から飛び出した一つのタマネギが、そのまま車道を転がっていって、トラックに轢かれて潰された。


「えっと…、大丈夫ですか?」


あたしは最高学年だから、敬語の必要なんて全く無いんだけど、思わず敬語で聞いてしまった。





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