だけど、どうも引っかかる。


「江梨子はさっきの人の、目の色って分かる?」

「え? そんなの知らないよ、陰になっててよく見えなかったし。ってか、そんなにジロジロ人のコト見てるなんて失礼だと思うし、私という存在がいながら浮気なんて許さないからね」


少し怒ったような顔で、江梨子が俺をジロリと睨む。
普段から美人顔の江梨子だから、睨むと無駄に迫力ある。
う、…反論が出来ない。
全くもって、江梨子の言うとおりだ。


「そんな事より、トシは英語の勉強に戻るよ。このままじゃ北高の入試どころか、次の定期試験でも危なそうなんだもん」

「……はい」


本当に定期試験ですら危ない俺は、大人しく英語の勉強に戻る事にした。
参考書を開くけど、やっぱり全く分かんない。


「江梨子、コレ分かんないんだけど…」



トイレに行く時にフッと見たら、北高の生徒が座ってた席に、小さな赤い染みが出来ていた。





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