そう言って、さっき江梨子も一緒に見た筈の、北高の制服を着た灰緑色の髪の人を示そうとして。
……居なかった。

あれ? 確かにあのテーブルの席に座って、本を読んでた筈なんだけど…。
俺は治った筈の自分の目を信じたくて、江梨子に聞いてみた。


「江梨子もさ、さっき見たよな?」

「何を?」

「灰緑色の髪の、北高の生徒さん」

「え? トシ、一緒に見たじゃん。大丈夫? まだ目、完治してないんじゃないの?」


俺の目は片目は完治して、片目は弱視の状態だ。
完治なんてしてないし、しない。
そこまで言って、江梨子も俺の疑問に気付いたらしい。


「確かにあの人、今は居ないね。さっきまでは座ってたけど。……でも、そんな事はよくあるんじゃない? 図書館なんだから、静かに移動してるだろうし」


江梨子の言ってる事は正しい。
そして、江梨子の言う事から、俺が見てた風景が途中までは現実だったって事も分かった。





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