江梨子は、俺が参考書も問題集も、江梨子の顔を見ているんでもない事に気付いたらしい。


「ちょっとー、何見てるの? 私以外の女の子に見惚れてたら、ちょっと嫌なんだけど」


図書館だから、小声で文句を言ってくる江梨子。
俺も小さく、北高の制服を着た人を示した。


「ほら、あそこの人、北高の制服着てるよ。髪が灰緑なんて、校則が自由な北高っぽいよな」

「あ、本当だ~。オシャレだね」


俺も江梨子も、第一志望は北高だ。
偏差値が高くて難しいが、自由な校風が格好良い。
実際に北高は制服こそあるものの、着るかどうかは自由だし、髪の色もピアスも自由だ。
今の俺と江梨子の目標は、一緒に北高で高校生活を送る事だったりする。


「あれを目指して、勉強頑張ろ! 特にトシは、成績も内申もヤバいんだから」


江梨子に励まされて、俺は英語の参考書を読み始めた。
なかなか頭に入らないけど。





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