ウチは食券を使ってないから、その分の人手が必要になる。
普段はバイトさんがそれをこなしてくれるんだけど、土日はあたしも参加してるって訳。



14時を過ぎ、少しは客足も落ちてきたところで、一人の女の子が店に来た。
あたしと同じ、北高の夏服を着ている。


「いらっしゃいませー!」

「…塩冷麺を一つ。ニンニク抜きで」


灰緑の髪が特長の彼女は、何処かで聞いた事がある大きめの声で、そう注文してきた。
厨房に行くと、注文の声は届いたらしく、両親がさっそく塩冷麺を作りにかかる。


「御馳走様でした」

「ありがとうございましたー!」


彼女以外の最後のお客さんが店を出た頃、ニンニク抜きの塩冷麺が出来上がった。
あたしは塩冷麺を、お客さんの元に運ぶ。


「お待たせしました。ニンニク抜きの塩冷麺です」


塩冷麺をテーブルに置こうとしたら、水入りのコップ以外に、トマトジュースのパックが置いてあった。





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