私はいつかと同じように、トシの目線の高さに右手を差し出した。
あの時のトシはなかなか私の手を見つける事が出来ずに、時間が凄くかかって、それでも何とか私の手を握ってくれたんだっけ。



トシは迷わず私の右手に視線を合わせると、甲が上になるようにそっと私の手を握り、トシ自身の顔を前に引き寄せる。
それから、キョロキョロと周りを見渡した。

……トシ、何がしたいの? この部屋、私の他に誰も居ないよ。


トシはそっと目を閉じて、…………私の手の甲にキスしてくれた。
今さらながら、早めに部屋を出てくれたDesireちゃんに感謝するよ。
私とトシがイチャつけるように、部屋から出て行ったんだよね。

トシは私の手の甲からそっと唇を離して、私を見た。
ニッコリと笑う。


「見えてるよ」


何だか照れくさくて、まともにトシの顔が見れなくなりそうだったけど、それが本当に嬉しかったんだ。





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