トシの家に着くと、既にDesireちゃんが来ていた。
私に気付いたDesireちゃんは、軽く頭を下げてくる。
Desireちゃんは白シャツの下に黒いワンピースを着て、白い大きなツバの帽子を被って、まるでセレブな女優みたいだった。


「お待たせ、遅くなってごめんね」

「いえ。…それより、自転車のスピードには気を付けて下さいね。坂も多いし、また交通事故に遭いますよ?」


言われてみればその通りで、私とトシは坂でスピードを落としきれない車に撥ねられたんだった。
ここでまた交通事故に遭っちゃったら、元も子も無いし、私の意識を戻してくれたトシの願いが無駄になってしまう。

Desireちゃんの言葉は説得力だらけで、私は本当に交通事故に遭いそうで怖くなった。
……それともアレか、吸血鬼には予知能力でもあるの?


トシの家のチャイムを押し、おばさんに開けてもらう。
おばさんには、今日来る事は伝えてあった。





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