腹部とかから小さく採血しようと思うけど、セクハラはしたくないなぁ。




「左手出して」

「左手?」




三河さんは大人しく左手を差し出した。


手首の動脈から念を送って、腹部から採血するのが一番だろう。

左手にこだわったのは、左がより心臓に近いからだ。




俺は三河さんの左手首を握り、腹部らへんに念を送った。

三河さんは「うっ」と小さく呻いて、脇腹を押さえた。


これで三河さんの脇腹には、“剣で刺した先から血が飛び散る”という図柄の痣みたいな痕が出来た筈だ。




「三河さんの腹に出来てるだろう痕だけど、たぶん半年もすれば消えるから。洗っても擦っても、絶対に消えないけど」

「報酬って、血と痕で、全部?」

「そう。三河さんの場合はそんなに大きな願いじゃなかったから、採血量も少ないしね」




そう言って、俺は三河さんに微笑んでみせた。




「……そうか。どうもありがとう」

「いえいえ。今後も吸血鬼集団・アンモラルを御贔屓に」




そう言うと、三河さんは苦笑した。





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