「トシは、どうして命を引き換えに、私の意識を戻せたんだろう?」


…ああ、その事か。
俺の頭に、俊秀の苦しんでいた姿が浮かぶ。


あの頃の俊秀は、誰よりも現実を悔やんで、誰よりも俊秀自身を憎んでた。
二人の幸せを考えて。上野の幸せを考えて。

同じ量の幸せなら、俊秀自身より、目覚めた上野が味わった方が良い。
俺と俊秀の出した結論は、つまりはそういう事だ。


「…それは俺の影響もある」

「能登君の?」

「あぁ。ただ、俺は聞かれたから答えただけで、最後は俊秀が自分で決めたんだ」

「どういう事? ……トシに止められてたとしても、絶対に説明して」

「…もう良いだろ。そもそもトシの目が見えなくなった本当の理由を話した時点で、俺はトシとの約束を破ってるんだ。説明するから、先にソレ飲めよ。脱水症状になるぞ」


俺は半分くらい強制的に、上野に飲むように言う。





.