Desireちゃんは私達を見て、「でも」と続ける。


「どっちかにメールしたかと思うんですが、報酬は、二人から半分ずつ報酬を戴く事も出来ます。依頼人を上野さんと能登さんの二人にして、半分ずつ血を戴けば、多少の貧血……って事にはいきませんが、軽い症状が残る程度で済む筈です」



終わりが分かるなら、怖い物は何も無い。
未来があるから、何かを失うのは怖くなる。

私とトシの一番の違いは、実はそれなんじゃないかな。
トシは命と引き換えだから、終わりしかない。
私には未来があるけど、視力を失う事になる。

終わりしか無いなら、どんな事だって出来る。
未来で苦しむだろうから、失うのは、何かを決めてしまうのは怖い。



「…上野? 聞いてる?」

「上野さん?」


気が付くと、能登君とDesireちゃんが私の顔を覗き込んでいた。
どうやら考え込んじゃって、二人の話を聞いてなかったらしい。

悪いのはどう考えても私だから、素直に謝る事にする。





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