光子が苦笑しながら、荷物の入った鞄の一つを持ち上げた。
友美が、黙って一番大きくて重い鞄を持ち上げる。
……ありがとう、友美。本当に重いと思うけど。


「さ、帰るよ、江梨子」

「うん。友美、光子、ありがとう!」


あの交通事故以来、初めて家に帰るんだって思うと、何だか不思議な気分になったんだ。
久しぶりと言うか、誰かの家に遊びに行くような。



だから、その時だけは忘れてた。
トシの目が、考えれば考えるほど深刻だって。


でも、考える事を止める訳にはいかないの。
そうしたら、トシの目が良くなるどころか、何も変化も無いだろうから。
それじゃ、前には進めない。
私も、トシも。未来が無くなっちゃうよ。

あと、トシは覚悟出来てるかもしれないけど、私はトシを置き去りにして、自分だけ幸せになる事は出来ないよ。
私だけ進学するなんて、ありえない。
私もトシも進学して、一緒に幸せになるんだ。





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