後ろを振り返るまでも無かった。
ヤンキー共が部室を荒らしに来たらしい。





「昨日は放送部をメチャクチャにしてやろうと思ったら、とんだ邪魔が入ったしな。今日はとことん暴れるわ」




あたしは荒らそうとも思わないし、イライラはサンドバックにぶつければ良いとも思う。
荒らす側の事情なんて知った事じゃない。

…しかし、放送部は無事だったのか。
今すぐ、放送部を助けてくれたっていうヒーローが現れれば良いのに。




ヤンキーが一人、廊下側の窓ガラスを叩き割った。
怪我人が出たらたまらない。


部員達は各々の作品を持って、教室の隅に逃げていた。
全員、怯えた目をしている。

そりゃそうだよね。


あたし、もう少し喧嘩慣れしとけば良かったな。
最悪、あたし以外の部員が全員無事なら良いや。





強く目を瞑ったら、ヤンキー共のざわめきが聞こえてきた。

そっと目をあけると、灰緑色の髪の生徒が、ヤンキー共を片っ端から殴っている。




「ごめん、被害出させて」

「……因幡?」




後輩が小さく呟いた。





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