「あっそ」


そこまでは、俺の知った事じゃない。
退院手続きとかって、保護者とか成人じゃないと、受け付けてくれないんじゃないの?

まぁ、でも一応…。


「あと能登君、もう一つ教えて欲しい事あった」

「何?」


まだあんのか。
もう全部教えたと思うんだけど。


「トシを助けてくれた人、…Desireちゃんだっけ? その子の連絡先、分かるなら教えてくれる?」

「え? 何で?」

「“治らないなら、私に連絡くれ”みたいな事、言ってたんでしょ?」

「…あ、あぁ」


確かにそんな事を言ってた。
それを俺は、上野にも言った。

この連絡先を教える事で、俊秀と上野が本当に幸せになれるなら。
俊秀との約束を破った事になるけど、また俊秀と上野が笑い合えるようになるなら。
俺はきっと、後悔はしないと思うんだ。


俺は上野のガラケーに、赤外線でDesireの連絡先を送った。





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