私のもう一つの不安の元凶ってのは、私の彼氏であるトシの目が見えなくなって、治る気配が無いという事。
それどころかトシは、また目が見えるようになる事を、何か諦めてるようにも見える。


どうやらトシは私と一緒に遭った交通事故で失明したみたいなんだけど、それだと母さんがしてくれた話とツジツマが合わないんだよね~。

だって母さん、“トシは一人でお見舞いに来てくれてた”って言ってたし。
にわかで目が見えない人が、一人で自由に出歩けると思えないんだよね。




「江梨子、来たよ」

「トシ、ありがとう。能登君も」


能登君に手を引かれて病室に入ってきたトシは、能登君が出してくれた丸椅子に、確認するように座った。

そして、私がいるだろう方向を向いて微笑む。
今日も少しだけずれてる。


「何だよ、その取ってつけたような感じは?」

「だって私にとって、能登君はオマケだもん。メインはあくまでもトシだもん」





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