俊秀は手探りで首から下げてるガラケーを開き、普段より遅いながらもボタンを押して操作する。

俺はそれを見て、凄く不思議な物を見ている感覚になった。
…俊秀、どうやって操作してるんだろう?
表示されてる内容も、自分が入力してる内容も、確認出来ない筈なのに。


「ごめんな、和明。ちょっと待って」

「…あぁ」


『今日はお見舞いに来てくれる?』という音声が流れて、俊秀はゆっくりと、だけど他の動作よりは指の動きは早く、ボタンを操作した。


「はい、お待たせ。ごめんな」


気付くとそう言って、俊秀は手を差し出していた。
俺は俊秀の手を握り、俊秀をエスコートしながら眼科に向かった。




「…なぁ、俊秀」

「何?」


俺は眼科医の待合室で、俊秀に疑問をぶつけた。


「…オマエ、どうやってケータイ操作してんの?」

「…あぁ、“5”のボタンを触ってる」

「“5”のボタン?」





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