「俊秀? 和明だけど、入るよ」

「おぅ」


部屋に入ると、首からガラケーをぶら下げた俊秀が、ベッドに腰掛けていた。

机の上は片付いていて、勉強した形跡は無い。
受験生がどうのこうの言う前に、俊秀は今のままじゃ進学は厳しいかもしれない。
問題を読むのも、答えを書くのも難しい。



「よう、俊秀、調子はどう?」

「見えない」


俺が少しでも明るくしようと軽い感じで話しかけたのに、俊秀からはバッサリと返事がきた。


「薬、ちゃんと使ってる?」

「使ってる。でも全然良くならねぇよ」


そりゃそうだ。
死を軽くしてもらった事からなった失明だ。

ただの栄養失調じゃないだろうと思うし、簡単には済まないだろうな。



「じゃあ、眼科行くぞ。手を出せ」

「はい。……あ」



俺が俊秀の手を掴んで立ち上がらせようとしたら、ちょうど電子音がした。
タイミングが良いんだか、悪いんだか。





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