私は右手を差し出してみた。


「トシ、私に触る事、…出来る?」



トシも右手を差し出す。

トシの手はフラフラして、いつも手を繋ぐよりも時間もかかったけど。
それでも確かに、トシは私の手を握ってくれた。


トシが目が見えてない事に変わりは無いんだろうけど、それでもトシとの縁みたいなものが切れてないように感じて、少しホッとした。


……だって正直、怖かった。

あの交通事故でトシとの縁が、未来が切れてしまったら。
もう二度と、トシの笑顔を隣りで見る事が出来ないとしたら。
……それは、交通事故に巻き込まれた、私の所為だろうから。



「これから、トシを眼科に連れて行かなくちゃ」

「分かった。検査終わるの待っててくれて、ありがとうね」



能登君が苦笑して、トシの左手を握った。
そのまま、病室を出て行くトシと能登君。

能登君に引かれるトシの左手の、手首の白い包帯が気になった。





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