「…分かりました」


たぶん上野さんの体調がこのまま良くなれば、彼女が下野の面倒を見てくれるだろう。
例え上野さんが、下野の盲目の全ての真相を知らなかったとしても。


「それでもどうしようもなくて、それでも上野さんの笑顔をまた見たければ、私に声かけて下さいね。何とかします」



Desireはナースコールのボタンを押してから、俺の手を引っ張って病室を出た。
引っ張られた腕が痛い。

俺とDesireが病院を出ると、一人の走る男子とすれ違った。
あれは確か、…クラスメートの能登?
病院の廊下なんて走るなよ。



「何で能登がいんだよ…」

「駿河さんにお願いして、連絡してもらった。“下野さんと仲が良い人を、病院に向かわせて下さい”って」



……あっそ。
準備が良いヤツ。

すると今度は、もう一つの疑問が浮かんだ。



「Desire、何で俺が病院に居るって分かったんだ?」





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