俺が上野さんに手をかざして5分経っても、上野さんの意識が戻ったような手応えはなく、当たり前のように上野さんは反応しなかった。


…何だコレ。
ここまで手こずるとは思ってなかったぞ。
そんなに重症だったのか。

俺は上野さんに、吸血鬼の力を注ぎ続ける。




さらに5分経って、力を注ぎすぎて俺の意識までも朦朧としてきた頃。
上野さんの瞼が少しだけ動いて、「トシ…」と呟いた。


「江梨子……!」


上野さんは下野の声に反応して少しだけ目を開き、下野を見て微笑んで、また目を閉じる。
急いでナースコールのボタンを押そうとする下野の腕を掴んで、俺は下野を止める。



「上野さんはもう大丈夫だ。あと1時間もすれば、ちゃんと目覚めるだろう。下野、報酬だ」



力を使ってクタクタになった俺は、一刻も早く血を摂取したくて仕方無かった。
下野が丸椅子に座ったのを確認して、俺は下野の左手首を強く握った。





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