上野さんが入院してる病室のドアをノックして、中に入る。
既に、下野が丸椅子に座って、上野さんの顔を静かに眺めていた。



「下野、待たせたな」



振り返って俺を見る、下野。

…下野、俺が病室に入ってきたのに気づかなかったのか?
俺、ちゃんとドアをノックして入ってきたぞ。



「あぁ、Bloody。…江梨子を助けてくれ、頼む」

「分かってる。そういう約束だったろ」


俺は下野の左隣りに出されてる丸椅子に座る。



「左腕を出して」



下野は素直に左腕を出してきた。
俺は出された左手の、手首を握る。



「待って。俺、先に報酬を払うの?」

「…言われてみりゃ、そうだな。先に上野さんの意識を戻せば良い?」

「それで頼む」



俺は下野の腕を離して、上野さんの頭に手をかざした。
吸血鬼の力を全て集中させて、上野さんの意識を戻す。

後から考えると、この行動は、全ての後悔に繋がる事になる。





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