「いつもありがとうね。ほら江梨子、俊秀君がまたお見舞いに来てくれたわよ」



そう言って、眠り続ける江梨子の頭を撫でる、江梨子のお母さん。

……ごめんなさい、江梨子はこのタイミングで、奇跡的に目覚めるような事は無いんです。
俺はそれを知ってるんです…。



気まずくなった俺は花瓶の水を取り換えようとするが、既に江梨子のお母さんによって取り換えられた後だった。 



「……江梨子は、いつ目が覚めるのかしらね?」

「…俺も、一刻も早く、江梨子が目覚めるのを願ってます」

「…そうよね。こんなに江梨子を大切にしてくれる、俊秀君だもんね」



俺が死なない限り、江梨子が目覚める可能性は0に近いんだけど、さすがにそれを言う事は出来ない。

けど、寂しそうに江梨子を眺めている江梨子のお母さん姿を見ると、俺まで悲しくなってきた。
もうこのまま、俺の命を捨てて、江梨子の意識を戻したくなる。





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